第65章 金賞

「急に思い出したんだけど、原稿にまだ手を入れるところがあるの。こっちは任せたわ」

佑奈は、なぜ自分があの場から逃げ出したのか分からない。ただ「仕事が最優先」と言い聞かせることで、無理やり納得しようとしていた。

やがて締切日。佑奈はゆっくりと送信ボタンを押す。すぐに「送信完了」の通知が返ってきた。

まるで時間を測っていたみたいに、川西拓海がオフィスの入口に姿を現す。

「準備できた? みんな外で待ってる」

最後に会ってから一週間。あのとき途中で途切れた話題の気まずさなど、最初から存在しなかったみたいに、彼は自然にそう言った。

「え……うん、ちょっと待って」

佑奈は一瞬きょとんとした...

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